エイジフレンドリー補助金とは、高年齢労働者(60歳以上)の労働災害防止対策や労働者の腰痛対策などの指導や健康増進に活用する補助金。令和2年度に創設されたもので、今年度も実施される。今年度については、新たに「転倒防止や腰痛予防のためのスポーツ・運動指導コース」が新設され、高年齢労働者以外も対象となり、やや対象が拡大されている。
なお、エイジフレンドリー補助金は中小企業向けのものであるため、医療法人・社会福祉法人においては常時使用する労働者数が100人以下となる。
その他、今回の申請で注意しておきたい点を以下に列挙する。
・本補助金は、交付決定後から、支払関係書類提出の最終締切日(令和7年1月31日)までに実施され、その支払いを済ませる必要がある。交付決定日より前に安全衛生対策等を開始していた場合は、補助対象外となるので、交付決定通知書が届いた日を確認して、それ以降の日付で発注書等を作成すること。最終締切日を超えるような申請は認められない。
・補助金の支給回数は同一年度内に1回限り。
今回の3つのコースについて簡単に確認する。
〇高年齢労働者の労働災害防止対策コース(高年齢労働者が対象)
60歳以上の労働者の労働安全のためのコースで、身体機能の低下を補う設備・装置の導入などに対する補助となる。医療機関、介護施設等の高年齢労働者は対象となる。注意しておきたいのは、患者・利用者のサービスのための設備・装置の導入ではなく、働く側の負担軽減を目的とするものでなければならないということだ。
例えば、施設の老朽化により通路に生じた穴や凹凸の解消のための工事については、対象外となるが、介護施設の中に設けられた居室の出入口にある大きな段差を解消するために工事を行う場合は、高年齢労働者も出入りする部屋の段差解消であれば、補助対象となる。
また、 電動ベッドは、介助者の腰痛防止効果は認められるものの、被介助者側の負担軽減、介護サービス向上が主目的と考えられるため、補助対象としては認められないこととなっている。 電動昇降機能、電動背起こし機能つきベッド、褥瘡防止ベッド、マットやベッド付属の見守り装置、体重測定装置等も同様だ。また、自走式車いすも、被介助者側の負担軽減、介護サービス向上が主目的と考えられるため、原則として補助対象とはならないが、スライディングボードを使用する際に必要となる片ひじが外せるなど、高年齢労働者の身体的負担軽減に効果がある機能を有する介助式車いすについては、補助対象となる。また、熱中症対策として、室温が28度を超える屋内作業を行う作業場等において、電動ファン付き作業服に体温を下げる機能がある場合は補助対象となる(高年齢労働者の人数分が限度となる点に注意)。新型コロナ感染防止対策に関する費用は対象外となる。
〇転倒防止や腰痛予防のためのスポーツ・運動指導コース(年齢制限なし)
専門家による運動指導等に対する費用の補助が対象となる。なお、自院・自施設の従業員である理学療法士等による指導に対する経費は対象外だ。
ここでいう「転倒防止や腰痛予防の運動指導プログラム」とは、「① 専門家(専門家の監修も可)による労働者の身体機能のチェック」及び「② 専門家による実技の運動指導(オンライン開催可)」を言う。①または②の片方の取組しかない運動指導プログラムは補助対象とならない。
保険者と事業者による連携で、従業員の健康増進に取組むことに対する補助。事業主健診情報が保険者に提供されていることが前提条件となる。
メンタルヘルス対策、ハラスメント対策等の教育・研修も対象となるが、先に記載しているように、事業主健診情報が保険者に提供されていることが前提条件となっている。
患者・利用者だけではなく、医療機関・介護事業所においても高齢化は進んでいる。人口減少が進む中において、従業員の貴重な労働力と生活を守っていくためにも活用を前向きに検討したい。