近未来健康活躍社会戦略で明らかにされた「医師偏在対策総合パッケージ」と「後発医薬品の産業構造改革」の方向性。そして、「保険外併用療養制度の見直し」

8/31/2024

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 令和6年8月30日、厚生労働省より人生100年時代を健康で有意義な生活を送り続けることを目的とした政策方針である近未来健康活躍社会戦略が公表された。


その中身は、国際戦略と国内戦略の大きな2つのカテゴリーで構成され、国際戦略で4つの取組・国内戦略で6つの取組となっている。


ここでは、「医師偏在是正に向けた総合的な対策」・「後発医薬品の産業構造改革」・「イノベーションを健康づくり・医療・介護に活かす環境整備」の3つに着目してみる。

医師偏在是正に向けた総合的な対策~医師偏在対策総合パッケージ~

骨太方針2024にも記載されている医師偏在対策総合パッケージは、本年12月までに取りまとめの方針だが、今回、その骨子となる3本柱と大まかなタイムラインが明らかにされた。3本柱とは、①医師確保計画の深化、②医師の確保・育成、③実効的な医師配置の3つ。


この中で特に注目されるのは、②医師の確保・育成だろう。外来医師多数区域での新規開業に対する対応の厳格化だ。資料では、必要に応じて知事の権限を強化するとともに、規制的手法を可能とするような法令改正までも視野に入れている。2027年度からの施行を予定していることを考えると、駆け込み的な新規開業などが起きてしまわないか気になることもある。一方で、かかりつけ医機能報告制度の施行を見据えた総合医研修等を想起させるリカレント教育についても触れられており、新規開業に対するリカレント教育の受講を必須化させるようなこともイメージできそうだ。また、③実効的な医師配置をみると、地域別診療報酬の可能性も感じさせる。個人的には、都心部とへき地や外来医師少数区域で診療報酬に差をつけるのではなく、へき地等では外来を定額制にするなどの措置も一つの選択肢になるのではないかと思う。12月の取りまとめに向けて、議論を注視していきたい。

後発医薬品の安定供給等を実現する産業構造改革

安定供給問題の根本的解消に向け、産業構造そのものに大きなテコ入れがはじまる。後発医薬品メーカーの今後の理想的な在り方として、以下の3点を挙げている。

・数量シェアや品目ともに多い企業は、M&Aなどを通じて、総合商社型の企業への成長を。
・領域特化型の企業は、品目を集約化し、適切な規模で安定供給を。
・成分ごとの適正な供給社数は、理想的には5社程度に。


理想を実現するための4つの具体的な取組が示されているが、この中で「収益と投資の好循環を生み出す価格や流通の在り方」として、適正価格での流通を行うため、流通改善ガイドラインを改訂、と明記されている。価格交渉代行者への対応や妥当な薬価差なども議論されていくことが考えられ、医療機関・薬局の経営にもかかわるところとなる。

イノベーションを健康づくり・医療・介護に活かす環境整備~選定療養拡大~

健康寿命延伸などを目的とした新たな産業を育成するためのインフラ作りがテーマになっている。


ここであえて注目したいのは、保険外併用療養費の見直し。大学病院改革プランでも保険診療外収入の拡充といった文言があったのは記憶に新しい。



承認は受けているものの、薬価収載されていないものなどもあり、民間保険の活用も含めた使用促進を通じて、産業育成としたいところ。医療機関としても、公的医療保険にばかり頼らない経営を、大学病院に限らず考えていくことがこれから求められていく時代に入ろうとしている。この10月から始まる後発医薬品のある長期収載品の選定療養は、まさにのテストケースともなる。

近未来健康活躍社会戦略をベースに、各所で議論が行われていく。特に今回紹介した3つのテーマについては、医療機関・薬局経営においても大きな影響が考えられるところ。今後も注視し、解説していきたい。

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