令和7年度の通常国会に薬機法改正に関する法案が提出されている。医薬品そのものの品質と安定供給、創薬支援などとともに薬局の機能に関する見直しの4本柱で構成されている。


 ここでは、薬局機能に関する見直しに焦点を当てて確認をしていきたい。


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基本は「患者のための薬局ビジョン」の実現

 今回の見直しの方向性、今後を考えるうえで、基本は「患者のための薬局ビジョン」の実現にあることを改めて理解しておきたい。特に強調しておきたいのは「患者のため」という言葉だ。今回の見直しは、患者を主語にした、薬局の在り方と薬剤師に求められる役割について整理されている。


参照:改めて読み返し、基本姿勢に立ち返るための「患者のための薬局ビジョン」


患者にとっての利便性と薬剤師の対人業務時間を創出する「遠隔販売」と「一包化の外部委託」

 まず一つ目のポイントは、薬剤師がいない店舗(コンビニを想定)での医療医薬品の受け渡しを可能とするもの。イメージとしては、患者はコンビニでオンライン服薬指導を受け、当該コンビニに保管されている医療用医薬品をその場で受け取る、というもの。または、自宅でオンライン診療・オンライン服薬指導を受けて、近所のコンビニに受け取りに行く、ということもできる。



 患者としては、日用品の購入も同時にできるし、自宅近くに対応できるコンビニがあれば非常に便利になる。患者のための薬局ビジョンには薬局の立地について、建替を契機にから地域へ、とあるがこの目標を後押しするかのように見える。重要なこととしては、コンビニでの保管管理の在り方、薬局としての服薬フォロー体制の構築が考えられる。門前に受渡店舗だけを置き、服薬フォローは薬局から定期的に行う、ということもできるだろう。対人業務の時間創出ともなる。なお、この遠隔販売については、管理店舗と受渡店舗は当面は同一都道府県内にあることが条件となる。



 また、国家戦略特区ですでにスタートしている調剤業務の一部外部委託についても盛り込まれている。その内容は、今後詳細を詰めていくことになるが、当面は一包化に限定されると思われる。



 委託する薬局が調剤設計、監査、服薬指導をすることになるので、純粋に一包化業務、場合によっては配送までを受託薬局に任せることとなる。薬剤師の対人業務時間の創出となる。

 遠隔販売、外部委託が推進されることで薬局薬剤師の対人業務時間が創出されていくことを考えると、今後の調剤報酬において、遠隔販売・外部委託を推進する薬局に対する対人業務に関する評価の量と求める要件の高度化も十分に考えられるだろう。


地域連携薬局に居宅機能を、健康サポート薬局には服薬の継続と健康増進機能を

 現状では、認定薬局として「地域連携薬局」と「専門医療機関連携薬局」の2種がある。前者はいわゆる生活習慣病等のかかりつけ機能を、後者はがん等の専門領域のかかりつけ機能を担うものとなっている。なお、「健康サポート薬局」は認定薬局とは少し異なるもので、先の認定薬局をベースにしつつ、健康増進機能を有するものとして存在している。しかしながら、認定薬局と健康サポート薬局、双方とも患者からの認知度はそれほど高くなく、調剤報酬で直接的な評価があるわけでもない。




 そこで、今回の見直しでまず「健康サポート薬局」については、きちんと薬機法上で位置づけることと患者が継続して当該薬局を利用し続けることを前提として、健康増進を目的とした役割を課すこととなる。OTCの提案であったり、リフィル処方箋を利用する患者に対する血糖測定・血圧測定などの対応と処方元への連携など考えられる。個人的には、リフィル処方箋については、血糖測定・血圧測定などが店舗でできる認定薬局及び健康サポート薬局での利用に制限した方がよいと思う。処方する医師も少し安心できるので、リフィル処方箋の推進につながるのではないだろうか。

 一方で認定薬局に対しては、居宅機能の強化が盛り込まれる方針だ。新たにはじまるかかりつけ医機能報告との連動、新たな地域医療構想における薬局の役割を発揮してもらうための環境整備だと考えられる。

 ところで、こうした認定薬局・健康サポート薬局に対する次回調剤報酬での対応はどうなるだろうか。あくまでも予測だが、従来通り、認定薬局・健康サポート薬局であることに対する直接的な評価はないだろうと思う。ただし、地域支援体制加算の実績要件などからもわかるように、認定薬局・健康サポート薬局であることを間接的に評価できる要件はある。認定等を維持継続していくことで評価され続けると考えたい。



 合わせて確認しておきたいが、薬局経営の観点ではBCPについても押さえておきたい。BCPは令和5年度の薬機法改正でも義務(サイバーセキュリティ対策)となり、令和6年度調剤報酬改定における連携強化加算等でも要件に盛り込まれている。一口にBCPといっても、サイバーセキュリティ対策・新興感染症発生時・災害発生時の3種が必要であることを改めて理解し、定期的な訓練(救急の日に実施などわかりやすい)を通じて、スタッフにその存在と緊急事態発生時の対応について知ってもらうようにしよう。緊急事態発生時、もっとも大事なことは助け合いの精神。それは、事業所内だけではなく、近隣の薬局とも。



 人口減少、長期処方の推進、さらに今後検討される市販品類似薬に対する自己負担割合の見直しなどで受診患者数及び受診回数の減少が考えられる。今後、こうした認定薬局や健康サポート薬局では、処方薬以外の提案も経営的には必要になってくることも視野に入れて、今後の対応を検討しておきたい。また同時に、地域住民にPRをして、認知度を高める方法も重要だ。良い取り組みであっても、知ってもらわないと意味がなく、経営の継続は難しくなる。


医薬品の販売方法の見直し

 いわゆる「零売」については、原則禁止とすることが明記されている。原則なので、例外もあるが、その例外はかなりのレアケースで、販売数量も最小量とされる。なお、漢方については現場での反場に支障がないように、とのこと。



 要指導医薬品については、オンライン服薬指導による対応を認めることとなる。同時に、要指導医薬品の中で一類に移行できないものを明確にすることも記されている。



 若者の薬物乱用に対する対策も盛り込まれている。濫用の恐れのある医薬品について、20歳未満への大容量販売の禁止、20歳以上への大容量販売ではオンラインもしくは対面による確認等を義務付けることとなる。また、カウンター越しなど手の届かないところに陳列するなど求められる。



 また、一般用医薬品の販売区分の見直し(2類と3類)については行わず、留意事項の見直しで対応することとなった。


 患者のための薬局ビジョンの実現に向けた見直しであること、何よりも「患者のための」見直しであることを理解して、対応していきたい。