2015年を基点として、ゴールを2025年とする地域医療構想。この地域医療構想とは、地域の実状に合わせた入院医療の適正化といえる。その多くの姿は、病床の種類、ボリュームを現状と2040年から始まる本格的少子高齢社会(団塊の世代の皆さんが一人残らず90歳となる)を見据えて緩やかにダウンサイジングしていくものともいえる。そして、いよいよ2022年度からは外来の地域医療構想に着手する。それが、外来機能報告制度であり、紹介受診重点医療機関だ。
まず、外来機能報告制度についてのタイムラインを確認する。
ポイントとなるのは以下だ。・対象となる医療機関を選別するため、重点外来(医療資源を多く使う外来、高額医療機器
等を使う外来、特定の領域に特化した外来)を有する医療機関を都道府県で抽出し、実績
を集計する。
・対象となるのは病院、有床診療所だが、高額医療機器等を所有し実績のある無床診療所も
対象とする。対象となった医療機関に対し、都道府県より外来機能報告の依頼をする。
・紹介受診重点医療機関になるかどうかは、地域医療構想調整会議などの協議の場などを通
じて議論し、最終的には医療機関の意思で判断する。紹介受診重点医療機関となった場合
は、都道府県のホームページで公表される。
紹介受診受診医療機関という名前の通り、基本は紹介状を切符として受診する患者が中心の医療機関となる。そのため、専門外来や画像診断センターのような機能、透析医療など行う医療機関が多くなるだろうと考えられる。当然ながら、初診患者や専門治療が完了した患者の通院が減ることから外来患者数は減るものの、比較的重症患者を診る割合が多くなり、また入院においても紹介受診重点医療機関入院診療加算(800点、一般病床200床以上の病院のみ)が算定可能となるなど診療単価は高くなり、経営的には働き方改革もでき、効率性は高まることと期待される。
また、令和4年度診療報酬改定で新設された連携強化診療情報提供料(旧・診療情報提供料Ⅲ)の活用範囲がぐんと広がり、連携することのメリットが拡充する。連携強化診療情報提供料とは、紹介を受けた患者の診療状況を紹介元にフィードバックすることで得られる診療報酬で、従来の紹介状では紹介をした側のみが評価されていたところを紹介を受けた側が逆紹介に至らないものの診療状況をフィードバックすることで評価されるようになったもの。ただし、前回までの診療情報提供料Ⅲでは、紹介元もしくは紹介先のいずれかがかかりつけ医機能を有する医療機関(機能強化加算、地域包括診療料、地域包括診療加算など)でなければならないことと、紹介元からの求めがなければならないというものだった。そのため、そもそも紹介元がかかりつけ医機能を有しているかわからなかったり、紹介元からの要請がないがために算定できていないケースが散見されていた。私もよく地域医療連携の現場を見ていて感じるのだが、上手く連携ができている地域というのは、感謝やお礼のキャッチボール、途中経過の報告が定期的に行われているという傾向がある。この連携強化診療情報提供料は、そうした上手くいっている地域の特性を捉えたよいものだと思っていたが、悩ましく感じていた。ところが、紹介受診重点医療機関の誕生に伴い、連携強化診療情報提供料と見直され、紹介受診重点医療機関と難病診療拠点病院等に限定されるが、かかりつけ医機能を有する医療機関との連携でなくとも構わないこととなった。紹介元からの要請が必要なのは変わらないので、要請してもらえるように情報をお伝えすることが必要だ。また、点数も3月毎の算定だったが、毎月1回算定可能となった。
視点を変えて考えてみると、地域包括ケア病棟を有する病院が機能強化加算の届出をしてかかりつけ医機能を有し、地域の診療所に紹介をすることで、地域の診療所との連携強化診療情報提供料を通じた連携ができ、退院後も患者との関係を維持継続して、レスパイト入院や在宅からの緊急受入れなどの機会を逃さないことにつながることが期待される。また、当該病院はかかりつけ医機能を有さなくとも、地域にある透析診療所などで紹介受診重点医療機関の届出をする医療機関と連携強化診療情報提供料を通じた連携ができることも期待され、先ほどと同様に、将来の見込み入院患者の確保にもつながる可能性がある。連携強化診療情報提供料とは、単に医療機関同士の連携だけではなく。地域にある医療機関と患者が関係を維持継続するためのものといえる。
なお、特定機能病院及び一般病床200床未満を除く地域医療支援病院では、紹介状を持たずに初診から受診をすると、診療費・選定療養費とは別に国が定めた5,000円の自己負担が発生している。一般病床200床以上の紹介受診重点医療機関もこの負担の対象となるが、紹介受診重点医療機関となってから半年間の経過措置が発生することとなっている。これは、外来勤務医の働き方改革に資することが期待されてのことともいえる。
2023年3月頃には紹介受診重点医療機関が明らかになる。また、医療の実績も明らかにされる見通しだ。地域や疾病のペイシェントジャーニー(患者が自身の病気を認識して、治療をするまでの行動プロセス)を読み解く上では大変興味深いものとなりそうだ。そして、この外来においても医療従事者という貴重な医療資源の集約化と、緩やかなダウンサイジングのはじまりとなる。