患者情報は誰のもの?地域密着で展開する医療機関だからこそ押さえておきたいセキュリティ対策。

3/31/2022

ニュース解説 医療ICT

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 4月から様々なものが値上げされる。その中の一つに、医療機関での受診もあるわけだが、話題になっているのが「オンライン資格確認」に関する診療報酬上の加算に伴う患者負担増だ。

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診療報酬は医療機関の収入になるので、加算がつくのうれしいことなのだが、主語を医療機関ではなく、患者に置き換えると、それは患者の経済的負担が上がることになるわけで、間接的な受診抑制にもつながりかねないこととなる。だから、診療報酬で評価されるということは、それ相応のメリットを患者さんに与えることが必要になる。

オンライン資格確認ついてのメリットや患者へのどう伝えるかは以前も私の考えをご紹介したが(オンライン資格確認の現況(2022年3月13日時点)、今後について。)、そもそも患者の情報って誰のもので、どういう権利があるのだろうか?

まず、患者の情報は誰のものかと言えば、間違いなく患者本人のものといえる。その一方で、患者情報を記録した媒体は作成・管理する医療機関ものといえる。少なくとも5年間はその媒体は保存しなければならないが、医療訴訟のリスクを考えると、民事・刑事訴訟の面から20年以上は保管しておくことが必要になると考えられる。そうした観点からも、医療機関には患者情報の善管注意義務がある。整理すると、患者情報という「記録の中身」は患者のもので、患者情報という「媒体」は医療機関のもの、ということになる。これは、銀行にお金を預けている関係に似ている。お金を引き出すには手数料がかかる(最近はATMからの入金にも手数料がかかる!)が、今回の診療報酬の加算はその手数料とか、情報の維持管理費ともいえなくもない。ここで大事なことは「信用」の概念だともいえる(参考:かかりつけ医に3つの定義。新療法集ての評価は?)。オンライン資格確認は、どちらかと言えがリアルバンクというよりも、ネットバンク。オンライン診療もそうだが、その利用を強要するのではなく、メリットとデメリットを伝えた上で、患者に選択してもらうことが結局は大事といえる。

ちなみに、オンライン資格確認では、高額療養費や後期高齢者医療保険の利用において、患者の所得区分などが医療従事者側に瞬時にわかることもある。私の経験だが、とある医療機関でホスピスのボランティア職員の方が、地域の井戸端会議で悪意なく患者情報を外で話してしまったということがあった。重大なセキュリティ事故だ。医療機関は地域密着のビジネスであることから、こうした事故で悪い風評が立つと、なかなかなくなるまで時間がかかるものだ。また、最近増えているオンライン診療だが、ついつい大きな声で診察室から話してしまったりしていないだろうか?外に丸聞こえだったりする。セキュリティ対策の必要性が最近叫ばれているが、システムの問題以上に、こうした無意識の事故も知らないうちに起きていることを知っておきたい。また、セキュリティ事故では内部の悪意ある犯行も残念ながらある。それは、職場に対する不満(待遇)や人間関係に起因するものに原因が求められる。オンライン資格確認等の医療ICTへの取組は重要だが、まずは職場環境の問題発見と改善が実は最初に着手すべき取組だといえる。

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