施設基準の届出状況の推移(令和2-4年)から見えてくること

7/07/2023

r6同時改定 ニュース解説 経営 薬局

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 令和5年7月6日に開催された第548回中央社会保険医療協議会 総会では来年度の診療報酬改定に向けた入院慰留に関する議論が行われた。内容としては、5月に行われている医療計画を踏まえた診療報酬の在り方でも注目を集めた「下り搬送」が取り上げられ、次回改定では高齢患者の入院医療に関するあり方が焦点になりそうな気配だ。合わせて、地域包括ケア病棟を有する医療機関における救急対応なども注目されており、これからの地域包括ケア病棟を有する病院としては、地域だけではなく、高度急性期病院からも「選ばれる」ための体制作りが重要となることを感じさせられた。

また、今回の中医協総会では、令和2年から令和4年(各年7月1日時点)までの施設基準の届出状況が資料として提示された。個人的に着目したポイントをご紹介したい。


〇病院数の減少、診療所の増加、薬局も増加


病院数の減少は、統廃合であったり、小規模な病院が診療所に移行していることが考えられる。5月に開催された地域医療構想に関するワーキンググループで病床機能報告の速報値が公表されたが、2025年の必要病床数の目標である119万床に対して、119.9万床にまで迫っていることが明らかにされたところ。ただ、地域毎や病床機能毎にはばらつきがあるため、今回の診療報酬改定では病床機能の役割分担を促したり、場合によっては急性期充実体制加算を届出る医療機関数に制限をかけるような見直しなど考えられるではないだろうか。



なお、薬局件数は相変わらず伸びている。しかし、直近の令和5年4月のデータによると、初めて減少に転じている。考えられることとしては、診療所の経営者の高齢化に伴う閉院が増えてきていることも関係しているかもしれない。減少トレンドに入ったかどうかは、今後も引き続き見ていく必要がある。

なお、調剤基本料1は大幅に減少し、大規模チェーン薬局が対象となる調剤基本料3(ハ)の数が大きくなっている。対物業務に頼った経営から、対人業務に重きを置いた経営、そのためには薬局内でのICT化の推進を通じた働き方改革による、対人業務時間の創出が鍵になる。



〇実績を伴うかかりつけ医機能「機能強化加算」は減少



診療報酬上のかかりつけ医機能とは、地域包括診療加算/地域包括診療料/在宅時医学等総合管理料/施設入居時等医学総合管理料/小児かかりつけ診療料などを指し、それを算定している医療機関が初診からでもかかりつけ医機能として評価されるための機能強化加算がある。その機能強化加算は前回の改定で在宅医療に関する実績要件が設けられた。その結果、届出は減少している。一方で、地域包括診療加算は増加となっている。200床未満の病院が主に届出る地域包括診療料は横ばいとのこと。今後注目したいのは、地域包括ケア病棟を有する病院が地域包括診療料をどれだけ届出してくるかという点に尽きる。

また、在支診/在支病についても見てみると、特に在支病の件数の伸びが顕著にみえる。私は医療資源が限られている地域での業務が多いが、そうした地域では、患者だけではなく開業医も高齢化が進み、在宅医療を単独で継続していくには限界がある。それは、都心部においてもある。病院によるバックアップであったり、病院がかかりつけ医機能を発揮していかざるを得ないケースも目立ってきていると感じている。


また、200床以上の病院で地域のかかりつけ医をバックアップする役割を担う在宅療養後方支援病院についてみると、やや増えていることが分かる。かかりつけ医機能を地域の開業医が発揮していくためには、非常に重要な病院になるが、まだまだ少ないと思う。


〇働き方改革の視点、医師事務作業補助体制加算は増加、急性期看護補助はほぼ横ばい


前回改定で見直された医師事務作業補助体制加算は、働き方改革の流れもあってか堅調に増えているが、急性期看護補助体制加算についてはほぼ横ばいの状況が続く。新型コロナの影響はもちろんあることだと思うが、介護事業での処遇改善であったり、意外なところでインバウンド需要の回復で観光客が増えて宿泊施設で働く方が増えていることなどが影響しているのかもしれない。高齢患者が増えてきている急性期病院での介護職者の配置を評価することなど検討材料に上げようとしている理由もわからなくはないところだ。

病棟薬剤業務実施加算については、増加の傾向が分かる。医師の働き方改革の中でも薬剤師の役割は大きく貢献していることが分かっている一方で、昨年10月に新設された看護処遇改善評価料では薬剤師は明確に対象外となった。来年からの医療計画では薬剤師の偏在指標に基づく薬剤師の配置の充実化が求められてくるので、次回診療報酬改定での評価の拡充に大きく期待が寄せられるところだ。


その他、入退院支援加算も増加。地域包括ケア病床の要件見直しなどの影響もあったのだろう。


〇外来機能分化の一環、日帰り手術は診療所で急拡大へ


前回改定では、短期滞在手術等基本料1の見直しのインパクトは大きかった(参照:令和4年度のDPC対象病院の係数等が公表。算定ルールの見直しなど確認します。)。重症度、医療・看護必要度と平均在院日数の対象から除外され、局所麻酔の手術であれば点数は下がるが麻酔科医はいなくても構わない、となった。要するに、軽微な手術は入院医療ではなく、診療所等の外来手術で、という流れ。本格的外来機能分化の始まりだ。実際に、診療所で一気に件数が増えている。来年からの医療費適正化計画では、白内障手術について、外来での実施を促す取り組みが始まる(参照:医療費適正化に向けた議論を確認 ~後発医薬品の推進、入院から外来診療への移行の促進など~)。


〇心大血管リハ、やや拡大


循環器病対策推進基本計画もでき、前回改定からは回復期リハビリテーション病棟の対象に心大血管リハの対象患者も加えられ、循環器病対策の推進がキーワードになっている。実際に届出状況を見るとやや増加の傾向にある。最近、新規開業をされる診療所でも心臓リハ施設を整備していることをよく目にするようになってきたように感じている。


〇精神科領域の地域生活支援



精神科領域においても進む地域包括ケアシステム。精神科領域の退院時共同指導料については、まだ横ばい状態といえる。対象となる患者が少ないとの声をよく聞く。また、地域生活支援でも重要な役割をはたす精神科デイケアについても、やや横ばい。新型コロナの影響もあるだろうが、患者に進めて拒否されるケースも多い。病気を理由に、周囲との関係に距離を置きたいという声なども。社会復帰の意欲をいかにして掻き立てることができるかが課題だ。


7月中には9月から始まる診療報酬改定の議論の第2ラウンドに向けた方針が明らかにされる予定だ。


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