令和5年7月12日、中医協総会が開かれ、次回改定に向けた在宅医療等に関する現状が報告され、議論された。現状からいえることとしては、医療医依存度の高い患者が在宅では増えていることが分かっている。医療技術やテクノロジーの進歩、地域における多職種連携の進展、そして、着実に進む地域医療構想がその理由だと考えられる。入院医療の病床は減少しているが、自宅のベットが病床となってきているといえ、2025年以降の新たな地域医療構想では、在宅・通院の適正化が重要なテーマになることを感じさせられる。
約160ページにも及ぶ資料から、個人的にポイントと感じたものを紹介したい。
〇在宅におけるがん診療・終末期医療が進展
がん診療については、医療計画・診療報酬の後押しがありかなり環境整備がなされてきているといえる。医師と薬剤師による訪問なども増えてきていることなど影響していると思われる。
今後期待されるのは、循環器病対策推進基本計画を踏まえた、在宅での循環器疾患患者の対応や末期心不全患者への対応。診療報酬上の評価など次回に向けて注目される。
〇在宅医療の提供体制は充実化
病床稼働率に恒常的な課題を抱えている200床以上の病院において、199床まで病床をダウンサイジングし、病棟に配置していた看護師を新設する在宅医療部門に再配置し、訪問看護を実施していくといったケースが増えてきている実感がある。また、199床以下になることで、外来では「地域包括診療料」「機能強化加算」「生活習慣病管理料」「特定疾患療養管理料」といった主に慢性疾患患者の対応やかかりつけ医機能に該当する届出が可能となる。また、在宅療養支援病院にもなることができる。すなわち、入院機能をもったかかりつけ医機能を有する病院になる、ということだ。近年増加しているとのことだが、そうした傾向が表れているのかもしれない。なお、精神科病院でも在宅療養支援病院になるといった傾向がみられており、精神科訪問看護は増えている一つの理由にもなっているように感じる。地域医療構想や診療報酬というのは、じわりと地域医療の在り方を時間をかけて、静かに変えてきている。
参照)
増加を続ける診療所、200床未満へのダウンサイジングが顕著な病院。競合か、共存か?
なお、当然ながら訪問診療等に関する実績は増えており、医療保険で対応する在宅患者が増加の傾向となっている。医療依存度の高い患者が多くなっていることもあり、時間外対応も増え、医師等の負担が気がかりだ。患者の高齢化に目が行きがちだが、医療従事者も高齢化の問題はあり、それは在宅医療の継続性にもつながる。そうした背景もあって、先日の改正医療法でのかかりつけ医機能の定義は、単独の医師や医療機関に負担の想いかかりつけ医機能を負わせるのではなく、地域をあげてかかりつけ医機能を発揮していこうという考え方になっているのだと私は思っている。
なお、在宅時医学管理料えはオンライン診療の併用が可能となっているが、その実績は非常に低い。医療依存度の高い患者が多いことなども考えられるが、患者との関係性にもよるところだと思う。患者としては、直接会いたいもの。一見すると便利で負担軽減に役立つオンライン診療、またリフィル処方箋だが、利用する患者を選ぶものであることが分かる。
なお、複数訪問では皮膚疾患の対応が多いことが報告されている。褥瘡なども考えられるが、白癬菌感染なども。お茶や座布団を出された時の指などから気づく介護支援専門員も多く、受診勧奨となることも。
〇訪問看護も医療依存度の高い患者への対応が増え、負担が重く
訪問看護ステーションを利用する患者の傾向をみると、精神および行動の障害の患者が多いことが分かっている。認知症なども含まれているということだろう。
また、医療保険給付の訪問看護の伸びが顕著となっている。難病の患者なども含めて、在宅での医療依存度の高い患者への対応力が高まっている。個人的に感じるのは、訪問看護業界も数が増え、競争が激しくなってきている。他事業所と差別化をしていく上で、終末期領域を強化したり、難病患者さんや精神科患者を強化するなどしていっているように感じている。
これも在宅医療と同じ傾向だが、時間外の対応も増えてきているのは、在宅医療・訪問看護の事業継続性の観点からは非常に気なるところだ。地域の医療資源のボリュームにもよるところだが、地域にある地域包括ケア病床を有する医療機関との連携強化であったり、薬局薬剤師に服薬フォローを通じた予防的・急変予知的状況確認をしてもらうことなどを考えていきたい。限りある医療資源を有効活用していきたい。そういった観点でいえば、骨太方針でも強調されていた栄養改善の取組は注目されるところだろう。
次回改定に向けては、今後も需要が高まる在宅医療に関する評価大きく期待できる一方で、負担の軽減・分散、地域の薬局や栄養ケア・ステーションを貴重な医療資源としてどのように有効活用し、持続可能な地域医療提供体制を構築するかがポイントになる。