令和6年10月31日、第184回社会保障審議会医療保険部会が開催された。12月2日以降、健康保険証の新規発行が終了することに伴う医療機関・薬局における対応についての確認と共に、患者が混乱しないための広報活動について議論された。なお、当日は4年連続となる国民健康保険料の上限額の引き上げと産科医療保障制度において、旧基準で保障対象対象外となった脳性麻痺児を特別に救済するための「産科医療特別給付事業」を令和7年1月から令和11年12月末までの申請に対応する方針が示されている。
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12月2日以降も、手元にある健康保険証は有効期限の範囲内で使用可能(最長1年)
注意が必要なのは、あくまでも新規発行が終了するということで、すでに手元にある健康保険証は利用可能である、ということ。また、マイナ保険証を取得しないままに健康保険証の有効期限を迎えることになる場合は、特に申請しなくとも無償で保険者より健康保険証の代わりとなる「資格確認書」が交付されることになっている。
ここで注意が必要なのが、「資格確認書」と「資格情報のお知らせ」の違いだ。例えば、私は協会けんぽに入っているが、その協会けんぽから最近「資格情報のおしらせ」という紙製カードが送られてきている。これは、「資格確認書」ではないので、それ単体で受診では使えない。マイナ保険証を使えない場面(オンライン資格確認ができない状況など)でマイナンバーカードと合わせて利用(資格情報がわかるマイナポータルの画面の提示でも可)することで受診可能となるもの。患者の勘違いも起こりえるので注意が必要だ。
なお、初診においてマイナンバーカードはあるものの、マイナポータルの画面提示や資格情報のお知らせがなかった場合については、被保険者資格申立書に記載してもらうことで、窓口負担は3割となる対応は可能だ。窓口10割負担はおこらないようになっているが、やはり周知が足りないと私も感じる。
ところで、マイナンバーカードの有効期限は5年となっている。その有効期限が切れた後3か月間は利用でき、3か月経過後は、資格確認書が交付されることとなっている。
ちなみに、マイナンバーカードに保険証利用の登録をするにはマイナポータルを利用する以外の方法もある。医療機関・薬局に設置されているカードリーダーでもできるし、セブン銀行のATMでも実は可能だ。
保険証の新規発行終了と共に、限度額適用認定証も新規発行は終了となる
マイナ保険証を活用するメリットの一つが、限度額適用認定証の事前申請が不要であることだ。12月2日以降は、その限度額適用認定証の新規発行も終了となる。ただし、12月1日までに発行された限度額適用認定証については令和7年7月31日までは利用可能だ。今後については、マイナ保険証を持たない場合は、資格確認書で対応することとなるが、オンライン資格確認ができない医療機関等の場合は患者の所得区分のわかる資格確認書が必要とされることもある。その場合は、患者は保険者に申請が必要になることを知っておこう。
オンライン資格確認の進展で、負担の軽減と医療費適正化が進みつつある
マイナ保険証の利用率が高い施設の方がレセプト返戻があった施設割合が減少しており、マイナ保険証の利用がレセプト返戻の減少の要因の1つと考えられる、という資料が提示されている。
医療DXの進展は、医療費の適正化と負担軽減を着実に進めているといえる。令和6年度診療報酬改定では、処方箋料の引き下げがあったが、この引き下げは一般名処方の推進とオンライン資格確認や電子処方箋などの利活用による業務負担軽減に伴うものであるといえる。医療DXの取組は、診療報酬の妥当な評価に近づけるとともに、患者の新たな負担なく医療サービスの向上につながることを改めて理解したい。