あえて算定しない、という選択肢

11/22/2024

r6同時改定 オピニオン かかりつけ医機能 外来診療 看護師 経営 地域医療構想

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※令和6年11月15日(金)、第32回日本慢性期医療学会のランチョンセミナー「『医療政策の最新動向と令和6年度診療報酬改定の影響から読み解く』~これからの経営に必要な備えと選択肢~」で山口がお話した内容の一部を当日使用した資料と共にご紹介しています。

令和6年度診療報酬改定では、療養病棟入院基本料が詳細に見直された。医療依存度の高い患者ほど診療材料等も多く使うこともあり、患者の状態に見合った評価に近づける内容だ。その一方で、医療依存度がそれほど高くない患者の対応について評価が引き下げられたといえる。療養病棟においても、一般病棟と同様に医療依存度の高い患者を多く受け入れ、医療依存度の高くない患者や認知症を有する患者については、在宅や介護医療院を含む介護施設で看ていく役割分担が必要になってきているのがわかる。

医療依存度の高い患者の受入れ割合を高めることで、病床稼働率に余裕を持たせることもでき、在宅や介護施設・障害者施設等からの入院受けや、地域包括診療料・在宅療養支援病院の届出を通じて入院ルート拡充の期待が持てる。

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経営と負担軽減のバランスを診療報酬から考える

医療依存度の高い患者の受入れ割合を意図的に高めていくことと同時に考えていきたいのが、診療報酬の算定項目だ。多くの医療機関では看護師不足が顕著になっていると感じている。ただ、公立病院等では雇用延長や定年延長等の施策が講じられてきているようで、やや看護師不足については落ち着きを見せる地域もある。ただそれは、周囲の民間病院等に看護師の人材が行き届かないことにもなる。そこで、あえて考えておきたいのが算定する診療報酬項目を選択する、ということだ。あくまでも医療依存度の高い患者の受入れ割合が高いことを前提にしてのことだが、例えば入院初日のみに算定できる医療安全加算や感染対策向上加算等の届出をせず、看護師をはじめとするスタッフの負担軽減(時間外労働や記録、カンファレンスなどの間接業務)を優先する、ということだ。


だからといって、医療安全対策や感染対策をまったくしない、ということではなく、要件を満たすレベルまでは至らないものの、必要最低限の取組は行うということだ。また、近隣の基幹病院の感染対策認定看護師やリスクマネジャーに協力をいただき、サーベイを定期的に受けるなどの支援を受けることも合わせて考えたい。目先の診療報酬ももちろん大事だが、持続可能な経営を考えれば、貴重な財産・資源でもある人材の確保を優先できるようなマネジメントを意識しておきたい。そう考えると、認知症を有する患者の受入れについても考えておく必要がある。

医療依存度の高い患者の受入れ割合を高め、あえて算定しない、という選択をすることで、看護師をはじめとするスタッフはプライベートとのバランスをとって長く働き続けることができる。そうした体験談をSNSなどを利用して口コミを広げていくことで、新たな採用につながる期待も持てる。特に、結婚や出産を契機に働き方を見直したい世代の看護師にはSNSなどによる宣伝効果は大きいだろう。

ベースアップ評価料の今後は?、新たな地域医療構想における慢性期入院は?

令和6年度診療報酬改定はプラス改定となったが、よく見ると、賃上げ部分のみがプラスになっているともいえる。その象徴がベースアップ評価料だ。やはり気になるのは、次回以降も継続されるのかどうか、ということ。あくまでも個人的に感じているのは、当面は継続されるのではないだろうかと感じている。いずれは、基本診療料に包括されていくことも考えられるが、ベースアップが定着するまでは継続されるのではないだろうか。ただ、今回の姿のまま、ということはないだろうと思う。参考になるのが、介護報酬における処遇改善加算だ。現在に至るまで継続されており、さらにキャリアパス要件など追加されるなどして、アップデートが続いている。診療報酬においても、同様のアップデートは十分に考えられるのではないだろうか。


また、昨年12月に公表された「改革工程表2023」では、「病院長等に対する労務管理に関するグループワークを含むマネジメント研修の受講者数 【2024年度から2026年度の期間に延べ3,000人】」というKPIが設定されている。管理者の労務管理に関する学びの有無も評価のポイントになる可能もあるのではないだろうか。

参照:「改革工程表2023」より、医療機関・薬局の経営と実務、健康寿命延伸・医療費適正化に関するポイントを整理しました。

新たな地域医療構想を見据え、個人的には慢性入院医療でも外来機能をある程度高め、かかりつけ機能を有していくことが必要に感じている(参照:医療機関機能のカテゴリー・類型(2分類・4+1類型)が明らかに。診療報酬等との紐づけ予測をしてみる。)。急性期等の連携元に頼らず、病院自ら患者を獲得していくためにも、病床を有効活用するためにもかかりつけ医機能を有してフォローを継続していくためにも、人口減少に合わせて病院も緩やかなダウンサイジング(診療所等に転換)に対応していくためにも。自院だけではなく、周囲の変化にも目を向け、環境の変化にいち早く対応し、必要に応じて何かを捨てることで周囲からの協力を得ることも必要だ。

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