医師偏在対策としての5つの案が示される

11/23/2024

かかりつけ医機能 外来診療 患者 経営 地域医療構想 地域包括ケアシステム

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 令和6年11月21日、第12回新たな地域医療構想に関する検討会が開催された。テーマは医師偏在対策。令和9年度からはじまる新たな地域医療構想では、患者の療養する場を入院だけではなく、在宅・施設まで包括して考えることとなっているため、外来医療の適正な環境整備が必要だ。しかしながら、医療の地域差は大きく、その差を埋めて、どこに住んでいても等しく医療が受け有れる環境を創り出さなければならない。そこで、医師偏在対策に関する議論が、地域医療構想について話し合われる場でも必要となっている。なお、医師偏在対策については、他の審議会・検討会でも議論されている。年内にも「医師偏在対策総合パッケージ」として取りまとめ行われることとなっている。

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医師偏在対策、5つの案

今回の検討会では、厚生労働省から5つの案が示されている。これまで示されてきたものを整理した枠組みで、いわゆる新規開業や経済的インセンティブにやや踏み込んだ内容となっているのが特徴だ。次の5つがその項目となっている。

「重点医師偏在対策支援区域(案)と医師偏在是正プラン」
「医師少数区域等での勤務経験を求める管理者要件の対象医療機関の拡大」
「外来医師多数区域における新規開業希望者への地域で必要な医療機能の要請」
「経済的インセンティブ」
「全国的なマッチング機能、都道府県と大学病院等との連携パートナーシップ協定」

参照:外来医師多数区域に診療所数の上限を設定し、新規開業を許可制にすることを検討へ

注目度が高いと思われる「重点医師偏在対策支援区域」、「新規開業の規制的手法」、「経済的インセンティブ」について確認をする。

重点医師偏在対策支援区域(案)の考え方

重点医師偏在対策支援区域(案)に対しては、厚生労働省が候補区域を明示して、都道府県が選定していくものとなる予定だ。支援区域の決定後に医師偏在是正プランを策定する。医療提供体制の維持・継続が困難で早急な対応が求められる地域への対応策だ。


新たな地域医療構想は、2040年をゴールとしているので、2040年の環境に耐えうる医療提供体制を整備することが求められる。今回の検討会では、各都道府県の2040年の予測が示されている(九州のみ紹介)。


重点医師偏在支援区域での開業や既存の医療機関における外来機能の強化、情報通信機器の活用促進がキーワードになってくる。なお、重点医師偏在対策支援区域の設定・医師偏在是正プランは急を要する地域が対象ということで、先行して対応を進めることとなっている。令和8年度中に策定を終えることを目指す。

外来医師多数区域における新規開業に対する規制的手法

新規開業規制などと言われることもあるが、厳密に言えば、外来医師多数区域における新規開業希望者への当該地域で不足する医療を担っていただくための要請、といえる。以前もお伝えしたが、従来からの外来医療計画にある開業希望者への都道府県からの要請を医療法でも規定するなどして、厳格に、着実に運用しようというもの。 

参照:リスタートとなるか?外来医療計画 ~これからの新規開業、高額医療機器の導入で注意したい視点~

ただ、今回の検討会では開業3か月前に提供予定の医療内容を届け出て、外来医療に関する協議の場(かかりつけ医機能報告における協議の場など?)に出席し、要請を行うなどの考えが示されている。3か月前ではかなり遅いように感じる。また、都道府県からの要請に応じないままに開業した場合、勧告を行うことができ、保険医療機関の指定を3年間にする(従来は6年間)などの案が示された。


なお、自由診療へのけん制としてか、運営管理の責任者として管理者を設け、一定期間の保険診療に従事すること等を要件に加えることも提案されているところに注目したい。
これらの案を踏まえた新規開業までタイムラインも提示されている。


なお、財務省からは診療科の偏在解消まで視野に入れた案が先日公表されている。12月の医師偏在対策総合パッケージへの影響も考えられるので合わせて確認しておきたい。

参照:2025年度政府予算編成に向け、秋の建議で社会保障に関する議論が行われる ~病院・診療所間・地域間の偏在、特定過剰サービスに対する減算、市販類似品の自己負担など~

令和8年度からにも、重点医師偏在対策支援区域に経済的インセンティブを?

重点医師偏在対策支援区域の医師偏在是正プランが策定される令和8年度からも診療報酬におけるインセンティブを講じることを提案している。また、診療報酬上のインセンティブだけではなく、事業承継に必要な支援や、医師等の手当増額の支援、生活環境の整備なども盛り込まれている。

なお、ここで注目したいのは経済的インセンティブを増額することで地域の患者の負担が上がってしまい、受診控えが起きてしまいかねないため、保険者に拠出を求める案が盛り込まれている点だろう。外来における重症化予防に関する項目の実績に基づいた拠出額などであれば理解も得られるかもしれない。

医師偏在対策については、これまでも様々議論は行われ、外来医療計画が策定されるなどしてきた。新型コロナもあって、その実効性は曖昧になった感がある。緊急時から平時になったといえる今こそ、持続可能な地域包括医療体制を創る機会だといえる。

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