令和6年11月8日、第11回新たな地域医療構想等に関する検討会が開催されている。今回の検討会で注目されるのは、新たに設定される医療機関機能の内容について。これまでの議論では、「高齢者救急の受け皿となり、地域への復帰を目指す機能」・「在宅医療を提供し、地域の生活を支える機能」・「救急医療等の急性期の医療を広く提供する機能」の3つの機能を構想区域で整備していくことを必須として、「その他の機能(専門医療機関や回復期リハビリテーションなど)」を必要に応じて設定を検討していく、というものだった(参照:地域ごとに急性期機能の集約化を。診療所医師の高齢化等にも目を向けて、地域で必要な外来医療提供体制の整備を図る。)。今回は、その設定区分の考え方についてやや整理が進んでいている。また、新たな地域医療構想では外来・在宅との連携が重要なポイントの一つとなっているが、その点についても検討さえている。
【お知らせ】医療政策ニュース解説ブログroute"hckn"の更新情報をBlueskyでお知らせします。よろしければ、フォローをお願いいたします。
外来・在宅等との連携はデータに基づいて整備を
今回の議論では、これまで行われてきた議論をベースに、現状の課題の明確化を行うとともに、医療提供体制や介護事業者の量等にも大きな差もある。また、すでに施行されている外来医療計画や医療計画における在宅医療計画などをデータ等に基づいて、地域にあった推進をしていく方針だ。
外来機能報告のデータ、令和7年度から施行・令和8年6月以降にも医療情報ネットで公表される「かかりつけ医機能報告制度」のデータなどを活用した地域での協議から始まっていく。かかりつけ医機能報告制度における2号機能について話し合われる協議の場を活用していくことになるだろう。
参照:かかりつけ医機能報告制度の今後のスケジュールが明らかに。「協議の場」と「地域医療構想調整会議」の関係性などは?
医療機関機能の報告の大まかな方針は定まるが...高齢者救急等と急性期拠点の名称問題
今回の議論では、新たに設定される医療機関機関機能の大まかな内容が示された。これまでは、3つの機能と必要に応じて設定するその他の機能、そして広域に対応する診療や医育機能の役割を担う大学病院本院を示す機能で検討が進められてきていたところ。今回は、厚生労働省より2分類(「地域ごとの医療機関機能」と「広域な観点の医療機関機能」)・4+1類型が提示された。
あくまでも私の勝手な推測だが、現状の施設類型、施設基準・診療報酬項目に当てはめてみると、以下の図のように区分できるのではないかと思われる。
ここで課題となってくるのが、急性期拠点機能と高齢者救急等機能の違いなど名称から受けるイメージのインパクトだろう。
それぞれの機能は、病床機能報告と同様に、医療機関が基準に合致しているかを検討した上で報告する、ということになる。ここでまずポイントになるのが、基準、について。この基準については、今後策定される新たな地域医療構想策定のためのガイドラインを基にして、各地域の実情に合った「地域ごとの基準」がベースとなる。そのため、名称は全国共通でも地域ごとに考え方は変わってくるということだ。また、急性期拠点機能と高齢者救急等機能等、機能の重複報告は構わないとのことだ。個人的には、それであれば病床機能報告だけでもよいのではないかとも思ってしまう。医療機関機能報告は、地域住民に対してもわかりやすく、というメッセージもあるが、地域住民は外来機能(かかりつけ・紹介受診)のみ周知されていればよいのではないかと思っている。それは、患者が自分の意思で受診するからだ。入院については、患者が自分の意思で選ぶというよりも、紹介・連携の観点から救急隊や医療機関が入院先を複数選び、患者が選択する、ということになってきていないだろうか。医療機関機能の名称から連想されるイメージが、患者にとって正しい選択にならないことが起きないだろうか。むしろ、医療関係者の間だけで通じあえるような専門用語や略語のようにしたほうがよいのではないかと思ったりする。
新型コロナ禍で起きた患者受け入れキャパシティ不足、主に地方都市で起きている医師不足を考えると、ある程度急性期を集約化していくことは必要だと感じる。また、医療の質を上げていくためにも、集中して量をこなし、繰り返し、精度を上げて、標準化して、さらなる効率化を実現していくべく急性期の拠点化が必須なのは間違いない。
名称の問題で、かえって効率が悪くなってしまったり、患者の受診行動にマイナスの影響が出ないように、慎重に議論をしていってほしい。