量質転化の法則とは、量が一定の限度に達することで質が変化するという哲学者ヘーゲルの弁証法の基本三原則の一つ。ネットビジネスなどでよくつかわれた言葉で、例えばネット証券による手数料の値引き合戦がその代表といえる。今やネット証券の手数料が当たり前になりつつあり、それが「常識」にまでなろうとしている。
先日、2021年8月よりスタートした認定薬局制度である「地域連携薬局」に関する話題が伝えられた。
【東京都】地域連携薬局500軒突破‐専門は8軒と伸び悩み(薬事日報)
改めて認定薬局制度について簡単に整理すると、新たに2つの認定薬局を2021年8月より都道府県知事が実績に基づいて認定、その実績を鑑みて毎年更新することとなっている。其の2つの認定薬局とは、がん等を専門とする「専門医療機関連携薬局」と地域包括ケアシステムの基幹として期待される「地域連携薬局」。専門医療機関連携薬局については、「がん」とひらがな表記であることがポイントの一つ。がんそのものだけではなく、がんに関連する症状等も含めてという意味だ。イメージとしては、地域がん診療連携拠点病院や大学病院等といった大規模病院の門前薬局や敷地内薬局など。一方で地域連携薬局とは、日常生活圏でもある中学校区に1~2軒の設置をイメージした、かかりつけ薬局の基幹ともいえるもの、だった。
地域包括ケアシステムは全国に約1万ある中学校区を範囲をベースに考えられている。そのため、地域連携薬局は地域の基幹薬局とも目され、以下の要件が求められている。基幹病院のフォーミュラリを地域に広げていく「地域フォーミュラリ」の基幹ともなりうることが期待されていると考える(参照:フォーミュラリの推進と評価の可能性、患者にとっての「最善」であること)。
その基幹薬局ともいえる地域連携薬局について、東京都で500軒を超えたとの報道。全国では地域連携薬局は2,434軒・専門医療機関連携薬局は99軒となっている(認定薬局の件数・令和4年3月31日時点、厚生労働省)。なお、私はとある大学病院の近くに住んでいるが、同一チェーンの門前薬局である2店舗が地域連携薬局の認定を受けている。実績を見たわけではないが、まずは量を拡充して、ある程度整って来たら、質を高めるべく要求水準を高めていく。「はしご外し」とも言われることもあるが、質の高い医療サービスを整備していく上では必要な取り組みで、量質転化の法則の実践。令和4年度診療報酬改定では、地域包括ケア病棟入院料がまさに量質転化の真っただ中にある。要件を満たしたらといって安心するのではなく、常に成長と本来の期待されている役割に忠実であることが大事なことを教えてくれている。地域連携薬局も競い合い、質を高め合うようになって欲しいと願う。改めて、患者のための薬局ビジョンを見つめ、今後の在り方を確認しておきたい(参照:改めて読み返し、基本姿勢に立ち返るための「患者のための薬局ビジョン」)。