重要性が増す医療現場の「記録」を改めて理解する

5/06/2022

ニュース解説 医療ICT 看護師 経営

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 記録が永遠の課題、特に看護師からよく聞かれる。医療業界で言う記録の代表的なものは「診療録」。いわゆるカルテ。これは医師が書くもの。似た言葉に「診療記録」というのがあるが、こちらは診療録、看護記録、検査記録など診療に用いた記録全般を指す。そのため、診療録を「狭義の記録」、診療記録を「広義の記録」と表現することがある。

そして重要なことは、その記録についてはその中身とモノとしての管理責任についてだ。以前「患者情報は誰のもの?地域密着で展開する医療機関だからこそ押さえておきたいセキュリティ対策。」の中でも記載したが、記録とはいわば患者の日記のようなもので、日記の記載を代行するのが診療記録等というイメージ。なので、書かれている中身は患者のもので、モノとしての記録は医療機関が責任をもって管理・保存・利用するもの。

やや古い話(15年前)だが、とある病院でのこと、患者から記録開示請求があり、開示した。その時、患者が血相を変えて怒ったことがある。その理由は、看護記録に「粘着質な患者である」との記載があったこと。書くこと(=アウトプット)でストレス発散になることもあるが、他人の日記と考えて書くことを忘れないようにしたい。

さて、記録について重要なこととして、書かれている内容と現実に起きていることに齟齬がないかということがあげられる。例えば、これまでも医療訴訟などメディアで目にしたことがあると思うが、そこで有罪になるケースの多くは記録の改ざんであるケースが多いことに気づく。他者の指示によって書き換えられることなどは裁判官の心象も悪くなり、罪は重くなるもの。そうしたこともあり、何らの事故で司法の立ち入りがあると真っ先に確認されるのが、診療録と看護記録を突合せ、齟齬がないか、また確認漏れがないかなどをチェックする。記録と言えば、POS(POMR、PONR)やフォーカスチャーティング、看護診断など様々な記録様式があり、その様式に眼が取られがちになるが、そもそもはコミュニケーションのツールであることを理解しておきたい。前者の気づきを確認し、必要があれば後任に経過観察の必要性など引き継いでいくという流れが大事だ。だからこそ、見られることを意識して、客観的事実と自身の考えは分けて記載しておくことが大事だといえる。看護師についていえば、記録も看護行為も看護過程がすべての基本だと思う。

ところで、こうした記録については、電子化の進展もあり、簡素化も進んでいる。本来業務時間を創出する上では非常に喜ばしいことだが課題もある。その代表がテンプレート化。実際に患者ごとに記録をし、診療/看護計画を立案しているとしても、テンプレート化された記録内容では指摘を受け、返戻となってしまうもある。そこで、テンプレート化するのは必要最小限にし、患者の個別性はテキストで記載する様式にするなどの工夫も必要だ。

また、診療報酬との関連で言えば、カンファレンスに関する記録も重要視されている。栄養サポートチームや褥瘡対策チーム、排尿障害チームなど様々なチーム医療が評価され、その活動の証として定期的なカンファレンスや研修が求められている。また、入退院支援加算や感染対策向上加算などでは院内のみならず、地域の他の医療機関とのカンファレンスなども求められている。まさに、地域が一つの総合病院ともいえるチーム医療だ。こうしたカンファレンスや研修でも記録が重要なのは言うまでもない。なぜなら、カンファレンスや研修をした「証拠」になるからだ。ただ、証拠となるためにはここでも参加者、実施日と場所など、参加者間で認識のずれがないような記録が必要になる。

医療の現場では記録が重要であるとともに、本来業務である直接的ケア時間の創出のためにはもっとICTの活用も含めた工夫、見られることを意識したリテラシーの向上など、医療の当事者だけではなく、その周辺企業が持つテクノロジーや経験が最も求められるところだ。

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