多様性のコミュニケーション① ~受け入れて昇華する、そしてノンバーバルコミュニケーション~

7/04/2022

r4診療報酬 介護保険 患者 看護師 経営 働き方改革

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スタッフ  :「今日は何月ですか?」

利用者   :「4月じゃないかなぁ」

スタッフ  :「今日は、6月ですよ。覚えておきましょうね」


つい最近目にしたスタッフの方と利用者のコミュニケーション。利用者は認知症だろうか。改めて同じ質問をすると、「4月」と答えていた。

なぜ誤った答えを出すのか。それは、その誤った答えを正しいと記憶しているから。なのに、その正しいと記憶している答えを否定し、新たな記憶を刷り込もうとすると、違和感というか「嫌」感が起きるのではないだろうか。よかれと思ってする行為はストレスを発生させ、心理的に負担をかけていることになっている。

ではどうすればよいのだろうか?意識できる記憶と無意識化の記憶を分けたコミュニケーションを意識することがポイントになる。以下は勝手な私ならば、の例。


スタッフ :「今日は6月ですね」

利用者  :「ああぁ、今日は6月でしたか」

スタッフ :「そうですよ、今日は6月です」


何気ないやりとりが実はプレッシャーを与え、症状悪化を招くことにもなっていることに注意したい。例えば昔のこと(10年くらい前)、こんなエピソードを経験した。

リストカットを繰り返す若者とスタッフ。その若者とあうたびにリストカットについて言及することで、ストレスを与え、リストカットを誘発していたのではないだろうかと感じた。そして、そのスタッフ自身も言及することがストレスになっていた。それなら、いっそのことリストカットを生活の一部のことのようにして受け入れ、関わりをもってみようと考えをみなおしてみた。「そういえば、最近はどう?」など会話の中でリストカットの話題に少しは触れるが、特に気にする様子もなく受け答えしてくれるように変化し、リストカットをすることはなくなった。

もう一つ、私の体験したエピソードを紹介したい。

ずいぶん昔(20年くらい前)のことだが、難病で長期入院されている患者さんとの会話で「はっ」としたことがある。夜にナースコールを押すのには勇気がいる、というものだった。ナースコールですぐに駆け付けて優しく対応してくれる、だけど顔は怒っているようにみえる、ということだった。接遇研修など病院でもよくされているだろうが、表情は自然のものでなかなか咄嗟の対応は難しい。丁寧な対応と表情のギャップが印象に強く、ナースコールに勇気が必要と言われたわけだ。表情を鍛えるのは難しいので、夜勤等に合わせた生活の調整・勤務体制の見直しなどが必要となる。職員も、患者も心地よくできるには、環境整備を経営者層がどれだけできるかに尽きると考えさせられた出来事だった。

令和4年度診療報酬改定では、医療従事者の負担軽減策の一環として、看護補助加算等が手厚くなり、同時に、院内研修などの充実が必要となった。負担軽減と人材育成・研修は、これまではコストだったが、診療報酬で返ってくる「投資」になっていると理解したい。


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