昨日「リフィル処方箋の推進、その先にある世界」と題して、経済財政諮問会議や財政制度等審議会におけるリフィル処方箋の推進に関する話題をお伝えしたが、その財政制度等審議会の中では何かと話題になる「フォーミュラリ」についても取り上げられている。
財務省主計局 リフィル処方「患者・国民目線で活用を」 地域フォーミュラリは第4期医療費適正化計画で
フォーミュラリとは、「患者に対して最も有効で経済的な医薬品の使用における指針(薬事日報社「フォーミュラリー」フォーミュラリー編集委員会編集,2018年2月15日第2版」)」というもので、簡単に言えば、根拠と経済性に基づいた患者にとって最適な薬剤選択の指針、というもの。可能であれば後発医薬品を優先的に使用することを主たる目的にした、院内及び地域で使用する医薬品リスト、ともいえる。
ここ数年、診療報酬改定の度に話題に上がるが、評価されるに至っていない。その原因としてよくあげられるのが、処方権は医師にあり、医師の合理的判断に基づくものであって、一概に言えるものではない、というもの。実際に、フォーミュラリは薬剤師が中心になってその原案をつくるケースがほとんど。ただ、あくまでも指針であって、絶対的なものではないことの理解が必要だと感じる。医師の判断によっては、これまでの経験則や専門的知見を重視しや処方でも何ら構わない。ただ、専門外の領域やまだ経験値の浅い医師にとってはフォーミュラリは参考として役立つだろうし、診療所等においては基幹病院での処方意図を理解し、処方の判断に役立つことになる。この絶対ではなく、あくまでも参考リストであることの理解が必要だと感じている。そこで、とある病院では「フォーミュラリ」という表現は用いず、「おすすめリスト」という表現にしているとも聞く。また、院内や地域で理解を得られるためにも「根拠」に執着せず、現実の「使用実績」を踏まえた選択にすることも大事だ。スイッチングコストの考え方だ。
ところで、フォーミュラリについて、これまでも診療報酬改定の議論の都度取り上げられてきた経緯があることをお伝えしたが、基本的なスタンスとして、フォーミュラリを推進していくことについては国としては前向きで、慎重に進めたい意向があることが透けて見える。どこから透けて見えるかというと診療報酬改定年の年末に集計がおこなれる「診療報酬改定結果検証部会」での調査項目からだ。
中央社会保険医療協議会 診療報酬改定結果検証部会(第64回) 議事次第
実は、2018年度診療報酬改定のあたりからだと思うが、調査を始めているのがわかる。こうした国が行う調査で意識して見ておきたいのは、結果もさることながら、調査項目だ。欲しい結果を導き出すために調査をしている、という視点だ。そのため、単に項目だけではなく、どういう聞き方をしているのかも踏まえてその結果を確認することで、今後の方向性が読めてくる(以下、調査結果から一部抜粋して、HCナレッジ合同会社にて編集を加えています)。
【ポイント1】一般病院とDPC対象病院と分けて調査している
【ポイント2】実際に使用している薬剤を明確にし、標準化を進める狙い
フォーミュラリを作成しやすい医薬品、後発医薬品に切り替えやすいものを明確にして、後発医薬品の使用促進策の一助としたい。こ
【ポイント3】地域フォーミュラリまで作ることを目指す
フォーミュラリは病院単独で作る院内フォーミュラリと地域全体で共有する地域フォーミュラリの2種類がある。個人的に感じるのは、院内フォーミュラリは今後診療報酬やDPCの見直しで、地域フォーミュラリは保険者努力支援義務など含めた医療適正化計画を軸に進めていくのではないかと思われる。基本路線としては、地域の基幹病院がフォーミュラリを策定し、ホームぺージで公表 → 近隣の医療機関はそのフォーミュラリを参照して処方、というような流れだ。また、ここで重要な役割を担うのが昨年8月より都道府県知事による認定が始まった「地域連携薬局」だと考える。地域連携薬局とは、近隣の薬局や医療機関等に薬剤適正使用の推進をしていくことや医療機関との定期的な連携、緊急時の医薬品の提供が求められている。この地域連携薬局が地域フォーミュラリの旗振り役として今後期待される。
2024年度は診療報酬と介護報酬の同時改定。2年度のことだ。同時改定は、医療と介護の連携を強化し、地域包括ケアシステムを協力に推進する6年に一度のビックチャンス。この同時改定に焦点を合わせて、フォーミュラリに関する議論はある意味正念場を迎えようとしている。
ただ、このフォーミュラリの議論を通じて個人的に気になっていることがある。それは、あくまでも患者が主役であるということだ。医療費抑制、標準治療が重要なことはわかるが、患者の理解と合意、患者の健康・経済・人生にとっての「最善」の選択となるフォーミュラリの推進であることが望まれる。