高額療養費制度とは、家計に対する医療費の自己負担が過重なものとならないよう、医療費の自己負担に一定の歯止めを設ける仕組み。医療を等しく受けられるようにするための公的支援策の一つといえる。日本にはそうした支援策としては、小児に関するものや生活保護者に向けたものなど充実している印象だ。以下の図は小児~成人で整理したもの。小児医療費助成は自治体によって異なる。
ありがたい側面としては、透析医療やがん医療など負担少なくして受けられるということもあるが、今年四月からは不妊治療が保険適用となったことで、高額療養費が使えることとなったのは大きい(第三者提供による生殖補助医療は保険外。また年齢制限に注意)。
難しい側面としては、医療費の増大も以前から指摘されていることだが、バイオシミラーの促進に影響を与えていることなども挙げられる。
令和4年度診療報酬改定では、バイオシミラーに関する評価の対象を拡充したところだが、この高額療養費制度が普及拡大のネックになりかねない。
バイオシミラーとは、高額な傾向にある先行バイオ医薬品の後続品であるため、価格は低く設定されている。先行バイオ医薬品は画期的な効果のあるものもあり、近年高額になる傾向がある。医薬品は公定価格である薬価があるので、その画期的な医薬品に高額な薬価をつけるためには、財源を確保する上でも後発医薬品・バイオシミラーの普及は重要だ。しかし、高額療養費制度は、バイオシミラーに切り替えることでその適用対象から外れしまうことや患者としては高額療養費で自己負担が減ったことで、バイオシミラーに切り替えても自己負担が軽くなったという実感がわきにくく、イメージもあっては先行バイオ医薬品を選択するケースが多い。確かに個人の医療費負担を考えると、そういった選択は間違いではないと思うが、国民全体の医療費の抑制や高額療養費を存続させていくという、広い視野に立って考えると、自己負担軽減の感覚が薄くてもバイオシミラーの利用を医療機関としての選択肢の一つとして提示していくことが重要だと感じる。また、医療機関の経営にとっても仕入れの適正化と診療報酬上の評価(バイオ後続品導入初期加算、後発医薬品使用体制加算)でもメリットもある。
国としても、バイオシミラーを含めた後発医薬品の使用促進の一環として、医療機関や保険者の使用実績などを公表することや、今後バイオシミラーに関する使用目標など明確にしていく方針を明らかにしている。