医療機関情報については、公的にもかなりのレベルで公表されている。そうした公表されている情報の中で、地域住民・患者が医療機関を選択することを目的に整備されているのが医療情報ネット(医療情報提供制度)だ。これは、医療法で定められている情報公開に関する取り組みで、各都道府県単位で取り組むことが求められている。
都道府県によってまちまちだが、年に一回以上は医療機関等は報告し、更新することとなっている。なお、この医療情報ネットは医療機関である病院・診療所だけではなく、薬局についても掲載されているため、薬局機能情報提供制度の機能も兼ねている。ところで、この医療情報ネットは医療機関の経営状況やそのポテンシャルをざっくりと掴むうえではとても有用だ。詳細な情報は病床機能報告制度もあるが、タイムラグがあるのが気になる。では、あくまでも私なりの視点で医療情報ネットを「使う」ポイントを一部だけ紹介したい。
・病院 ~病床の利用状況を確認し、大まかな売上を推測する~
1.一般病床・療養病床・精神病床等医療法に基づき病床種類毎の病床数を確認する
2.「医療の実績、結果に関する事項」から患者数及び平均在院日数を確認し、
病床種類ごとに「前年度1日平均患者数」/病床数×100で計算し、利用状況を算出。
一般病床であれば80%以上、療養病床と精神病床であれば92%以上あたりが目安。
ただし、「前年度平均在院日数」を確認し、一般病床であれば14日以内を目安にする。
いくら病床の利用状況がよくとも、平均在院日数が長いと診療単価に低い患者が多いと
考えられる。14日以内であれば、早期退院の診療報酬上の評価がある。一般病床の場合
は、重症で診療単価の高い患者が早期に退院し、すぐに重症な患者を受け入れるための
病床を確保していくこと、すなわち、前方での連携(救急や紹介)と後方での連携(退
院先・転院先の確保)が重要であり、それを地域医療連携という。なお、一人当たり診
療単価についても、入院基本料等をベースにして、計算することができる。診療単価
×365×病床の利用状況(%)×100でざっくりと出てくる。ただし、「続・地域医療の
再編を巡る話題(病床の基本的な考え方を整理します)」でお伝えしたが、一般病床に
は回復期も含まれることに注意が必要だ。厳密に見ていくならば、回復期の病床につい
ては病床機能報告や施設基準情報を基に分けて算出することをお勧めする。なお、回復
期の場合の病床の利用状況の目安は85%程度。
・薬局と医療機関の関係性の強度を測る
薬局の場合は、まだすべての都道府県での対応は終わっていないが、2021年8月よりス
タートしている認定薬局制度による都道府県が認定する「地域連携薬局」「専門医療機
関連携薬局」の有無がわかるようになっており(地域連携薬局など、というタブ)、薬
局の中でも地域及びがん領域のオピニオンリーダーとなる薬局がわかるようになってい
る。その認定薬局の有無のタブを見ると、医療機関に情報提供をした回数や医薬品適正
使用に関する情報提供をした回数などもわかる。また、認定薬局ではなくとも、地域医
療連携のタブからは回数まではわからないまでもその有無は確認できる。薬局について
は、他の医療機関との関係性や地域包括ケアへの取組などが読みとることができ、対人
業務への取組具合と傾向がわかる。なお、実績・結果など、のタブからは処方箋を応需
した患者数もわかることから、そのポテンシャルも読み取れる。
他にも、対応できる検査や手術の件数、対応できる指定難病、一日あたり外来患者数もわかることから、外来での売り上げ予測や医師の負担の程度の推測なども読み解くことができる。地域住民・患者の選択資料として、医療機関とのビジネスをする者として、それぞれの立場で有用な使い方を確認しておきたい。