令和8年1月9日、第640回中央社会保険医療協議会 総会が開催された。今回は、物価高に対する診療報酬上の対応、選定療養に導入すべき事例、近視進行抑制薬の処方に係る検査について議論されるとともに、昨年までの議論を基本方針に合わせて整理した資料が公表されている。なお、昨年までの議論を基本方針に合わせて整理されている資料については、昨年末に本ブログで整理した記事と突き合わせたうえで、改めて別の記事として紹介・解説したい。


参照:令和8年度診療報酬改定に向けた令和7年末までの主な議論を整理しました


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物価高への対応、令和7年度分は補正予算で、令和8年度は新加算、令和9年度は新加算×2倍

 物価高への対応として、厚生労働省から外来(診療所)・入院・外来(病院)について考え方が示されている。考え方については概ね了承されているが、具体的な数字が示されていないこともあってかやや複雑に見える。ざっくりと確認しておこう。

 まず、診療所等の外来についてだが、令和8年度診療報酬改定では今回の改定率の内訳にある「令和6年度診療報酬改定以降の経営環境の悪化を踏まえた緊急対応分 +0.44%」から外来分を切り出し、初診・再診料の引き上げに充当させ、さらに物価上昇に対する加算を新設することで対応する方針だ。さらに、令和9年度は、現在の物価見通しからさらなる上昇を見越して、令和8年度に新設される物価上昇に対する加算の2倍の点数を想定している。ただし、経済の見通しによっては点数は変動する(減ることもある)。




 入院医療についても同様の考え方を基本とし、入院基本料を引き上げ、さらに物価上昇に対する加算を新設、令和9年度は新加算を2倍にする方針となっている。




 なお、入院料については医療機関の機能によって入院基本料の引き上げ幅の考え方はかわってくる。例えば、急性期入院については補正予算では救急実績に応じた加算があったが、令和8年度診療報酬改定では「特定機能病院」「急性期病院」「その他の急性」と3つの区分を設け、それぞれの区分ごとに1人一日あたり入院費を配分して入院基本料を増額する。その一方で、回復期・精神・慢性期については、入院一日あたりで定額を配分して入院基本料を増額する。なお、精神については、救急搬送件数を考慮することとなっているが、回復期や慢性期でも救急受入実績がある病院もあることから、今後検討される可能性もある。




 病院の外来については、診療所等の外来と異なり、専門的な検査や治療などもあり、診療所等のがイライト同じ対応ではカバーしきれない可能性がある。そこで、入院時に対応する物価髙対策の評価(入院基本料の増額分と新加算?)でカバーする考えとなっている。




 今後、具体的な数字の入ったシミュレーションなども示される可能性もある。数字をみてみないと、実際の影響などがわからない状況だ。



選定療養の対象範囲の見直し、先行バイオ医薬品の選定療養への追加は先送りか?

 選定療養に導入すべき事例等に関する提案・意見募集が昨年春からおこなわれ、昨年9月17日の第617回中央社会保険医療協議会 総会でその結果が公表されていた。今回は、その中から令和8年度診療報酬改定で対応する内容について示されている。以下にその内容について示す。


◯新たに選定療養に追加

 裸眼視力 1.0 未満の小中学生の割合は年々増加しており、近視の進行抑制については一定のニーズが存在することが想定される。また、令和6年 12 月に近視の進行抑制を効能又は効果とするアトロピン硫酸塩水和物が薬事承認されたが、当該医薬品については薬価収載されていない。そこで、近視に係る治療を円滑に受けられるようにするため、近視の進行抑制を効能又は効果とし、薬事承認を受けている医薬品を選定療養の対象とする。

 なお、今回の中央社顔保険医療協議会 総会では、近視進行抑制薬の処方に係る検査に対する適切な評価についても議論されており、関係学会の指針上では、近視進行抑制薬による治療開始時及び治療中は、屈折検査等の検査を行うことが推奨されていることを踏まえて見直されることとなりそうだ。



◯既存の選定療養の対象範囲を見直す

・「保険医療機関が表示する診療時間以外の時間における診察」に「医師の診察と別日に実施される保険医療機関が表示する診療時間以外の時間における指導管理(外来栄養食事指導料、心理支援加算、がん患者指導管理料、乳腺炎重症化予防ケア・指導料等)」及び「緊急性のない保険薬局が表示する開店時間以外の時間における調剤」を追加する。

・「医科点数表等に規定する回数を超えて受けた診療であって別に厚生労働大臣が定めるもの」に「摂食機能療法」及び「リンパ浮腫複合的治療料」を追加する。



◯療養の給付と直接関係ないサービス等に追加・明確化するもの

※患者からの費用徴収が必要となる場合には、患者に対し、徴収に係るサービスの内容や料金等について明確かつ懇切に説明し、同意を確認の上徴収することとすることとされているとともに、徴収する費用については、社会的に見て妥当適切なものとすること。


・予約やオンライン診療の受診に係るシステム利用料

・予約に基づく診察の患者都合によるキャンセル料(診察日の直前にキャンセルした場合に限り、かつ、傷病が治癒したことによるキャンセルを除く。)

・Wi-Fi利用料

・在留外国人の診療に当たり必要となる多言語対応に要する費用(通訳の手配料や翻訳機の使用料など)



◯薬剤自己負担の在り方の見直しに関するものへの対応について

・長期収載品の選定療養の見直しについて                               

2分の1相当へ引き上げ


・バイオ後続品のある先行バイオ医薬品の選定療養への追加について            

社会保障審議会医療保険部会で引き続き検討し、必要に応じて、中央社会保険医療協議会においても議論する


・OTC類似薬の選定療養への追加について                            

社会保障審議会医療保険部会において議論が行われ、まずは、77 成分(約 1,100 品目)を対象医薬品とし、薬剤費の4分の1に特別の料金を設定する方針。今後、中央社会保険医療協議会においても議論する


 長期収載品の選定療養については、患者負担を2分の1とすることでほぼ決まりのようだが、バイオ後続品のある先行バイオ医薬品を選定療養に加えることについては、社会保障審議会医療保険部会での結論を待つことになりそうだ。令和8年度診療報酬・調剤報酬改定では、バイオ後続品に関しては使用体制加算の要件の緩和(入院時ではなく退院時の算定?)、一般名処方にバイオ後続品を追加、薬局におけるバイオ後続品の切り替え提案・保管管理を評価、といった推進策を盛り込む予定となっていることもあり、資料からは今回は見送る可能性が高いように感じた。