令和5年12月01日の第569回中医協総会の資料が公表されている。テーマは、医療DX・小児、周産期医療・リハビリ、栄養、口腔・長期収載品となっている。ここではリハビリ、栄養、口腔について確認していこう。
リハビリテーションについては、これまでの議論では疾患別リハについての算定日数上限に関する議論があったが(参照:地域への接近強化、地域包括ケア病棟・回復期リハビリテーション病棟の質的向上をどうやって評価するか?)、今回の議論では疾患別リハ毎の提供内容の精査、セラピストの業務内容・業務量の精緻な把握方法に関する議論があった。ADLが低い患者、認知症が重症な患者、また特定集中治療室用の重症度、医療・看護必要度のA項目の一部に該当する場合、疾患別リハビリテーションを実施する際に、複数人による訓練提供および訓練提供時間以外に10分以上の時間を要する割合が高い傾向にあったこと等を受けて、追加的な対応が必要となる場合の妥当な人員に対する評価を念頭に置いたものだといえる。急性期でのリハビリテーションをどのように推進していくかの議論が進められていることが分かる。
また、リハビリテーションについては介護保険事業者・障害者福祉サービス事業者との連携に課題があることが指摘されている。例えば、介護保険のリハビリテーション実施者が疾患別リハの実施計画書を入手していたのは44%程度といった具合だ。また、病院からの退院前カンファレンスを評価する退院時共同指導料2において、老健・介護医療院の訪問・通所リハ事業所の医師・理学療法士などは共同指導への参加が求められる退院後の医療機関の職種として位置づけられていないことも連携に影響を与えている。退院時共同指導料の要件で介護事業者のスタッフをどのように加えていくか検討されることになるだろう。
こうした現状を受けて、令和6年度介護報酬改定では、医療機関からのリハビリテーション計画書を入手した上でリハビリテーション計画書を作成することを基本報酬の算定要件に加えることを検討している。そこで、今回の議論では厚生労働省から、疾患別リハの通則に実施計画書を連携先に提供することを提案している。早期にリハビリの提供を開始することでその後のADLも変わってくるため、情報連携・共有を効率化する必要があることを意識してのことだ
障害者福祉サービス事業者との連携では、必要な人員が不足していることもあり自立訓練(機能訓練)の事業所数が増えていない。そこで、介護保険事業所や医療機関での共生型自立訓練(機能訓練)又は基準該当自立訓練(機能訓練)の提供を可能とすることが検討されていることを受けて、医療機関で実施するためのルールについても検討される。
情報の連携・共有、さらに施設や職員の連携・共有まで、リハビリテーションに係る人材は地域の共有財産ともいえる存在になっている。
なお、リハビリテーションについてはがん患者への術前の呼吸器リハビリテーションの有効性を踏まえて、大腸結腸がんや卵巣がん等術後合併症が減少していることが報告されている疾患を念頭に対象となるものを明確にしていくことも提案されている。
栄養管理については、ここ最近の診療報酬改定で非常に手厚くなっている。今回の診療報酬改定では、さらに進めることとなる。入院基本料等の算定に当たっては、栄養管理体制の基準の遵守を求めているものの、低栄養や経管栄養・嚥下調整食が必要な入院患者は一定数いることが分かっており、入院中の状態を精緻に把握し、早期に栄養療法の介入を実施するために必要な情報収集法など検討される。
また、先述したリハビリテーションに関する情報を介護事業者等と連携を促すべく、算定が低調な「栄養情報提供加算」を推進するための施策についても検討されている。また、介護保険施設からの入院の傾向を見ると低栄養が3割、摂食・嚥下機能障害が2割程度あることが分かっており、退院時だけではなく、入院時における情報連携の評価なども課題として挙げられ、検討されることが考えられる。
口腔管理については、医科歯科連携・医歯薬連携に関する議論が行われており、回復期リハビリテーション病棟を有する病院での歯科診療体制を設けることや地域の歯科診療所との連携を評価することなど議論されたところで(参照:医科歯科連携・医歯薬連携に関する評価の拡充へ)、今回の議論もその流れを受けて進んでいる。具体的には、リハビリテーション実施計画書への口腔管理に関する項目を設けること、近隣の歯科医療機関との連携促進がテーマとなっている。
急性期におけるリハビリテーション・栄養管理・口腔管理の推進についての議論では、これまでの議論でもあったように(参照:骨太方針2023に記載された「リハビリテーション、栄養管理及び口腔管理連携・推進」を診療報酬で ①栄養・口腔管理の視点、骨太方針2023に記載された「リハビリテーション、栄養管理及び口腔管理連携・推進」を診療報酬で ②リハビリテーションの視点)、急性期入院医療で効果のあるリハビリテーションを提供するための人員体制について、休日リハに対する評価、届出の少ないADL維持向上等体制加算を拡充するための見直しなど検討される。
その他、患者の状態に合わせた栄養管理を強化するための病棟への管理栄養士の配置割合を高めるための施策、栄養管理・リハ・口腔管理に関する計画作成のための多職種連携を推進するための施策について検討されている。