令和5年12月15日の第573回中医協総会の資料が公表されている。テーマは、在宅医療(訪問看護等)・入院(入退院支援・栄養管理、高齢者救急)・歯科医療・オンライン診療・長期収載品となっている。ここでは、在宅医療(訪問看護等)について確認したい。
〇訪問診療・往診について
これまでの中医協の議論では、包括的支援加算における要介護度及び認知症高齢者の認知症日常生活自立度などさらに要介護等が高く診療の時間がかかる患者の評価を見直すことを検討することとし、今回も議論された(参照:在宅医療に関する診療報酬改定の議論、「量」と「質」のバランスに苦慮することに)。さらに在宅医療の実態に即して、経口麻薬を投与されている患者を包括的支援加算の対象に加えることが提案されている。
またこちらもこれまでの議論の中であったことだが、訪問診療料の算定が多く施設入居時等総合医学管理料の算定割合が高い医療機関に対するいわば適正化について議論が進められている。具体的には「主として訪問診療又は往診を実施する診療所」に対して看取りの実績や施設入居時等医学総合管理料を算定した患者の割合(7割以下)を訪問診療料の算定が多く施設入居時等総合医学管理料の算定割合が高い医療機関に対して新たに求めることとなりそうだ。
その他では、外来診療に関する議論でも今後注目される「かかりつけ医機能」の環境整備の一環としての24時間対応・平時の連携、そして算定件数が伸び悩む「在宅療養移行加算」についても議論されている。24時間対応・平時の連携については、各地域で進む「地域医療情報連携ネットワーク」を活用して実際に行われた往診を評価することが検討されている。また同様に「地域医療情報連携ネットワーク」等のICTサービスを活用するなどして定期的なカンファレンスを実施できる環境をもって24時間体制を構築できている場合の「在宅療養移行加算」に関する新たな評価区分を検討する方針だ。
令和6年度からの第8次医療計画にむけて、一部の都道府県では二次医療圏の統合が進められている。医療圏が統合されるということは、在宅医療サービスで距離と時間の問題が出てくることにもなる。こうした距離と時間の問題を解消するためには積極的なICTサービスの活用が求められると共に、通信費やメンテナンス料といったランニングコストの負担を軽減する必要がある。今回の議論は、そうした負担の権限につながることが期待される。
〇訪問看護について
訪問看護においても、訪問診療と同様に適正化の一方で重症度が高いなど頻回な訪問が必要な患者に対する評価についての見直しが行われる方針だ(参照:訪問看護にも「適正化」と「負担軽減」の視点を)。具体的には、退院日当日に医師の指示や利用者及び家族等の求めに応じて長時間・複数回行われるケースに対する退院支援指導の評価を見直すこと、同一建物等居住者の割合が極めて高い訪問看護ステーション(訪問看護ステーションを運営する同一法人が有する同一建物に居住している患者への訪問看護が多いところに限定?)に対する評価の適正化などがあげられている。
また、介護保険における訪問看護と歩調を合わせるべく、介護保険改定に向けた議論で現在検討されている身体的拘束等の原則禁止や記録に関する規定を運営基準に設けることを医療保険の訪問看護でも設けることや、管理者に係る取扱いについて、介護保険の訪問看護と同様にテレワークが可能となるよう明確化することを検討することとしている。また、ICTの積極的な活用として、離島等のへき地での活用に対する評価として、離島等に居住する利用者に対して医師が行う死亡診断等を、ICTを活用した在宅での看取りに関する研修を受けた看護師が補助した場合を評価することなど提案されている。
地域医療構想の進展で療養の場としての在宅、二次医療圏の統合の進展、その結果、距離と時間の課題がこれからクローズアップされてくる。積極的なICTサービスの活用をカバーする診療報酬による支援に期待が集まる。