令和5年12月01日の第569回中医協総会の資料が公表されている。テーマは、医療DX・小児、周産期医療・リハビリ、栄養、口腔・長期収載品となっている。ここでは小児・周産期医療について確認していこう。
令和6年度は6年に一度のトリプル改定であり、医療計画・医療費適正化計画が新たにスタートする年だ。令和6年度の診療報酬改定に向けたこれまでの議論では、次期第8次医療計画を意識している面が従来の診療報酬改定の議論で見られないくらいに強く出ていると感じている(参照:診療報酬とは、医療計画を下支えするもの~5事業に対する診療報酬での評価の方向性を読む~)。地域医療構想がいろいろと言われながらも着実に進んでおり、医療機関の集約化や役割分担が、地域によって速度の差はあるが進んでいるからこそ、こうした議論ができているのだと感じている。今回の小児・周産期医療は医療計画の中では6事業を構成するもので、地域内の特定の医療機関だけが負担を負うのではなく、地域全体で最適化が求められる領域だ。
参考)集約化が進む小児・周産期医療、かかりつけ機能と連携強化が課題に
小児の入院医療の現状を確認すると、15歳未満の入院患者数減少傾向であり、入院の受療率も低下していることがわかる。そのため、小児入院医療管理料届出医療機関あたりの届出病床数はやや減少傾向となっており、小児入院医療管理料の病棟は、急性期一般入院料1に比べ、1病棟あたりの病床数が少ない状況だ。
また、小児専門病棟というより、小児と成人の混合病棟となっているケースが多い。そういった現状から、日本小児看護学会から混合病棟にいる子どもと家族の療養環境の向上に向けて「成人患者との混合病棟におけるこどもの療養環境向上のための具体的対策」として、ユニットマネジメント(病棟の一部を小児患者専⽤の「ユニット」として使⽤することを言い、区域管理は廊下を含むひと固まりの領域を小児患者だけの区域とし、その区域を小児科専⽤の「ユニット」として使⽤すること)の実施が提言されている。ユニットマネジメントについて、小規模(30名以下)結核病棟を一般病棟と合わせて運営できる特例があることを合わせて紹介している
提言を参考に、小児と成人の混合病棟の運用に関する検討をしていくこととなりそうだ。
また、小児病棟では親による付き添いにおいて、付き添う親に過度な負担がかかっていることが指摘されており、その解消策も今回議論されている。小児入院医療管理料では、保育士が1名以上常勤していることを評価しているものの、看護補助者に係る加算はない。例えば、夜勤帯において、寝具交換等の周辺業務を看護師が担っている割合が高いことなどもわかっていることから、小児入院医療管理料での看護補助加算について検討されることとなりそうだ。
医療技術の進歩と共に、高度急性期機能の集約化が進むことで人員の集約化も進み、結果として重症新生児の死亡率は低下してきている。その重症新生児に対しては、現行の新生児特定集中治療室管理料における看護配置よりも手厚くして対応する病院があることから、評価の見直しが進められそうだ。
新生児の入退院支援についても議論されている。新生児特定集中治療室に入室する患者のうち、18%は高度な医療を求めて搬送された新生児で、転院搬送された新生児においても、小児病棟を経ての退院支援が必要な場合がある。しかしながら、転院前の医療機関で入退院支援加算3を算定した患者でなければ、転院搬送後の医療機関で入退院支援加算3を算定できないことになっていることが課題となっている。また、入退院支援加算3では、入退院支援部門に「5年以上の新生児集中治療に係る業務の経験」を有する看護師の配置を求めているのだが、先述したように重症新生児は集中治療室から小児病棟等を経て退院することがあり、退院支援にあたり求められる経験は必ずしも新生児集中治療の業務だけにに限られないものといえ、業務経験の見直しを行うことを通じて届出と実績が横ばいとなっている状況を打破することが期待される。
その他、高度急性期に関する議論では、小児特定集中治療室において臓器移植患者は平均滞在日数が長く、算定上限日数を超過して滞在している患者が一定数存在しているという実態が報告され、前回改定で特定集中治療室等における臓器移植患者に係る算定日数上限が延長されたように、小児特定集中治療室でも算定日数の上限の延長について議論された。
医療的ケア児について、障害者福祉サービス報酬改定に向けた議論の中で「医療型短期入所サービス」において、医療的ケア児者を安心して預けてもらうため、事前に自宅等へ訪問し、医療的ケアの手技等を確認した上で、事業所に新たに受け入れた場合の評価について検討されているところ。今回のトリプル改定を契機に、連携を促進し仕組化する契機としたいところだ。実際に、入院受け入れに係る体制の整備を行っている医療機関の事例が紹介されており、新たな評価が期待されるところだ。
近年増加傾向にある児童精神の領域への対応もつい手も議論されている。社会問題化している児童相談所における虐待相談対応件数が上昇傾向であることも大きな課題であり、小児かかりつけ医診療料などの在り方、要件などに影響がありそうだ。また、発達障害について、専門職者の少なさ(特に心離職)が主な原因の一つとして、初診待機が解消されていないことが問題として挙げられている点にも注目したい。
入院における虐待等が疑われる児童の早期発見や関係各所との連携を評価する「養育支援体制加算」について、近年増加の傾向だ。また、日本小児科学会の教育研修施設や5類型病院(臓器提供施設として体制が整っている病院)等では虐待対応組織を設置している病院が246施設あることが報告されている(全943施設中351施設が回答)。虐待への対応に関する研修の実施なども含めて、虐待に対する早期発見・対応に関する取組の評価の拡充も期待されるところだ。
また、小児特定疾患カウンセリング料を算定した医療機関に、算定期限である2年を超えて受診している患者が一定数いることについても取り上げられていることから、何らかの見直しや適正化など考えられそうだ。
周産期については、早期産の割合が増加していることから、ハイリスク妊産婦増加への対応の必要性が指摘されている。