令和5年12月15日の第573回中医協総会の資料が公表されている。テーマは、在宅医療(訪問看護等)・入院(入退院支援・栄養管理、高齢者救急)・歯科医療・オンライン診療・長期収載品となっている。ここでは、オンライン診療・長期収載品について確認したい。
〇オンライン診療について、慎重に・積極的に推進を
情報通信機器を用いた診療、すなわちオンライン診療については国としても積極的な推進を促している一方で、その利用についての適正化が課題になっているのも確か。具体的には、初診からの向精神薬の処方が確認されていること、患者と医療機関の所在が異なる市区町村からの受診の実態があることがそれだ(参照:情報通信機器を用いた診療、医療の地域差解消に期待も、適正な使用が課題に)。
初診からの向精神薬の処方については指針では行わないこと、また患者の急病・急変などの緊急時にすぐに対応できる体制であることも必要とされることから、速やかに対面診療できる環境にあることが必要になっている。そこで、今回の議論では、「初診では向精神薬を処方しないこと」をホームページ等に掲示すること等を情報通信機器を用いた診療の要件に加えることに、また医療機関が所在する地域以外に所在する患者の割合を一定以上超えるオンライン診療の実績のある医療機関での対面診療の提供体制に関する要件設定と確認方法について何らかの取組を行うこととなりそうだ。オンライン診療の最大のメリットは、患者の身体的・経済的負担といえ、通院の時間・移動コストの削減にもつながる。極端に利便性を排除することのないようなルールの設定が求められるところだ。
さらに今回の議論では、精神科領域の活用についても、有効性が確認されていることなどから、精神症状の急性増悪や精神疾患の急性発症等により危機的な状況に陥った場合の対応、小児の発達障害での活用などについても議論されている。
参考)精神科の診療 オンラインでも対面での同等の効果 慶応大など研究(NHK)
精神症状の急性増悪や精神疾患の急性発症等により危機的な状況に陥った場合の対応、小児の発達障害での活用などについても議論されている。具体的にはこれまでの中医協でも課題として挙げられていた発達障害の初診待機が課題となっていることへの対応としての活用、算定年限である2年を超えて利用が続くケースが言って一度確認されている小児特定疾患カウンセリング料などを対象とすることだ(参照:小児・成人の混合病棟にあった評価を検討。子供に付き添う親の負担を軽減するべく、看護補助者の評価を。)。
適正に、慎重に、患者にとっての利便性を損なわないオンライン診療の在り方が今回のテーマだ。ただ、患者の住む地域の医療環境も影響されることから、一律に診療報酬の施設基準や要件で縛り付けるのではなく、個別指導等で対応していくことも一つの考え方となるだろう。
〇長期収載品の患者一部自己負担について
後発医薬品のある長期収載品に関する患者一部自己負担については、おおむね合意が得られているところ。残された問題は、患者の負担割割合だ。参照価格制制度をそのままに運用するのであれば、薬価差全てを患者負担とするところだが、今回はそうではなく、一部自己負担とすることになっている。
個人的には、すでに後発医薬品の使用割合が80%を超えている状況で、今以上に割合を引き上げていくには、患者自己負担割合をかなり高めにしていく必要があると思う。しかしながら、安定供給の問題が落ち着くまでは、なかなか高い設定とすることは難しく、対象となる薬剤も限られてくるといえる。どちらも一長一短あり、まずは低めの自己負担割合から開始して、都度状況を見ながら調整をしていくということが賢明にも考えられるが、どうだろうか。